商品研究レポート
素材を傷つけず頑固な汚れを落とすグッズ
フライパンや鍋に焦げついた頑固な汚れを落とすためのグッズを、店頭で数多く見かけます。便利な商品ですが、上手に選ばないと頑固な汚れを落とす反面、知らない間に調理器具を傷つけていることがあります。そこで、一般の店舗で入手できるタイプの異なる頑固汚れ落としグッズ8商品を購入して、傷つけやすさと汚れ落としの関係性を調べてみました。
試験試料
選んだのは、① 重曹入りクリーナー ② 研磨材入りスポンジ ③ ハイブリッド研磨粒子入りスポンジ ④ ゴム粒子入りスポンジ ⑤ ステンレスたわし ⑥ スチールたわし ⑦ メラミンスポンジ ⑧ 研磨材入り消しゴム です。
①は重曹面、②〜④はナイロン不織布面で評価しました。
表1は評価品の仕様一覧です。
評価面の観察
事前に評価する面をマイクロスコープ(80倍)で観察しました。
①は重曹の結晶が確認できます。研磨材入りの②③④は不織布の繊維に研磨材(例えば写真の丸囲み)が付着しているのが確認できました。それぞれの研磨材は、②は大きさの揃った球状、③は大小の大きさが混在し、④は繊維に絡むような形状で存在していました。金属製の⑤と⑥の繊維の太さは、極端に違い、⑥は⑤の1/10ほどで非常に細いスチールウールを使用していることが分かります。⑦は細かい網目状の繊維が見え、この細かい網目で汚れをかき取るのかと思われます。⑧は細かい研磨材が均等に敷き詰められているのが見えました。
試験方法
1) 傷つけやすさのテスト
長さ220×幅30×厚0.1mmのステンレス板を摩擦試験機(RUBBING METER FR-2 / スガ試験機株式会社)にセットし、水を含ませた試験品に175g重の負荷がかかる状態で1000往復擦ったあと、目視で傷つきの具合いを観察しました(写真1)。
2) 頑固な汚れの落としやすさのテスト
(1) 汚垢モデル板の作成
頑固な汚れを想定し、ステンレス板にゴマ油をハケで均一に塗り、180℃の熱を一定時間かけて油分を樹脂化させ、汚垢モデル板を作製しました(写真2)。サラダ油やオリーブ油でも試してみましたが、最もステンレス板に安定して強く固着したことと、汚垢の色が濃い色になり、目視判定がしやすいことからゴマ油での作成としました。
(2) 試験方法
頑固汚れモデル板を摩擦試験機(上記試験機)にセットし、水を含ませた試験品で50往復擦りました。擦ったあとの汚れ落ちの状態を目視で観察しました(本テストでは頑固汚れ落としグッズ単品での評価を行うため、洗剤は使わずにテストを行いました)。
試験結果
素材への傷つきやすさと汚れ落としの関係性が一目で分かるように試験結果の写真を一対で配置したのが表3です。
①⑥は素材を傷つけず、汚れ落ちに効果があることが分かりました。③は素材を傷めませんが、汚れ落ちは①⑥より劣り、やや良い程度でした。一方、②⑤は汚れを落としていますが素材を傷つけてしまいました。④⑦は素材を傷めませんが、汚れ落ちには全く効果がなく、試験前のブランクの状態と何ら変化がありませんでした。⑧は汚れを落とさないばかりか、素材を傷つける最悪の結果となりました。
1) 傷つきやすさのテストの結果だけでの検証
①と⑦は全く傷つかず、次いで傷が目立たない順で④► ⑥► ③► ⑧► ②► ⑤でした。①の重曹の結晶は、ステンレスを傷つることはありませんでした。水ですぐに溶けてしまったようです。⑦のメラミンフォームは、傷つきの原因となるような素材ではなかったのだと考えられます。⑥の材質である鉄はステンレスを傷つけませんでしたが、同じステンレス材を使用している⑤はかなり傷付けてしまう結果となりました。一般的な研磨材入りの②は目立つ傷をつけてしまうのに対して、大小の研磨粒子を組み合わせている③やゴム粒子の研磨材の④ではほとんど傷をつけませんでした。
2) 汚れの落としやすさのテストの結果だけでの検証
目視で評価した結果、汚れがよく落ちたのは①②⑥で、次に⑤► ③と続き、④⑦⑧は全く汚れが落ちませんでした。①は重曹による汚れの分解による効果でした。試験後に溶けだした重曹で表面が白くなっていました。②は汚れをよく落としましたが、傷つきやすさの試験と同様にステンレス面を傷つけていました。一方⑥は傷をつけずに汚れをよく落としました。
まとめ
傷をつけずに頑固な汚れを落とす①が最も優れている結果となりました。重曹のアルカリ成分が油汚れを分解し、重曹粒子は柔らかく素材を傷つけませんでした。ただし、使い続けて重曹成分が無くなった場合に汚れ落とし性能が落ちる可能性はあります。また、重曹は弱アルカリ性なので、手荒れしやすい人はゴム手袋の使用をおススメします。添加物に頼らないものであれば汚れの落としやすさと傷つきにくさのバランスのよい⑥がいいでしょう。⑥ほどではありませんが③もおススメできます。②や⑤は汚れ落としの効果は高いのですが、素材を傷つけてしまうことが分かりました。④⑦は素材を傷つけにくい反面、頑固な汚れには不向きでした。
今回のテストではステンレスに対して行いましたが、これらのグッズを使うときには、パッケージの使用説明や注意書きをよく確認し、使用できるものとできないものを把握することが大切です。
(2014.11.26 生活科学研究室)
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