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ピーラーの比較試験
ピーラーは野菜の皮をむく際に、とても重宝する道具である。
刃と柄のつき方でアルファベットの「I」の形に似ているI型と「T」に似ているT型の2種類があり、2000円以上するものもあれば100円ショップで売られているものもある。
使い勝手にどのような差があるのだろうか。
研究目的
I型4商品、T型5商品について、実際に野菜の皮をむいて切れ味や使い勝手を評価する。
ピーラー
試験に用いたピーラーは、表1の9種類である。
試験方法と結果
にんじんを、ピーラーを使いやすい真っ直ぐな野菜の代表とし、凹凸の多い男爵芋を球形の代表とし、3名で評価を行った。
にんじん試験(写真1)、じゃが芋試験(写真2)を行った後、総合的な使い勝手のよさに順位をつけた。
試験結果は表2にまとめた。
《にんじん試験》
縦に一直線にむいて、ピーラーの切れ味を判定した。
軽い力で長くむけて切れ味がよいと評価されたのはFとGだった。
I型よりT型の方が力をかけずにむける傾向だった。
《じゃが芋試験》
1個200g程度のじゃが芋を用い、皮むき回数をカウントし、むいた皮の厚さをショッパー型厚さ測定機(TCM-N1010)で測定し、皮むき後の重量から歩留り率を求めた。
Dを除くI型は包丁のように握って手前にむき下ろす(写真3)ため、芋のカーブに刃を沿わせやすく、芋を持った左手との連携もスムースであった。特にBは皮むき回数が9種の中でもっとも少なかった。同じI型でも、Dはむき上げて使うタイプ(写真4)であるため、一度にむける皮の長さが短く、その分、回数が多くなった。
T型のH、Jは刃が切り込める幅が少ないためか、むいた皮の幅が狭く、その分、回数が多くなった。
皮の厚さは1.1〜1.6mmと商品間に約1.5倍の差があった。
皮の厚さと皮むき回数の相関を調べたところ、9種類では相関係数0.2となり、ほとんど相関はみられなかった。しかし、最も回数の多かったDを除く8種類では相関係数-0.6となり(図1)、T型5種類に絞ると相関係数-0.8(図2)となって強い負の相関がみられた。さらに、T型の中で最も回数が多かったHを除くと相関係数-1.0となり、非常に強い負の相関がみられた。
このことは、T型ピーラーは刃がじゃが芋に深く切り込んで皮を厚くむけるほど、皮むき回数が少なくてすむことを示している。I型については、試験者の使用経験がT型ほど多くはなかったため、バラツキが大きくなってしまったと思われる。
歩留りは90〜92%と大差はなかったが、Dを除く8種類について皮の厚さと歩留りの相関を調べたところ、相関係数-0.8の強い負の相関がみられ(図3)、皮が薄いほど歩留りがよいことが明らかになった。
皮のむきやすさでは、最も高評価だったのはEで、Jは軽い切れ味が、Bは力を入れやすい安定感が好まれた。芽の取りやすさでは、H、Jが上手に取れ、C、F、Gは深くえぐれてしまい、Dは上手に取れなかった。
にんじんを使った切れ味、じゃが芋の芽の取りやすさにも差はあったが、総合評価にあまり影響せず、じゃが芋の皮のむきやすさがピーラーの使い勝手の総合評価に直結すると思われる。
まとめ
総合評価が高かったのは、昔から愛用者が多く、値段も手ごろなEだった。皮むき回数が最も少なかったI型のBも好評で、「包丁を使う感覚で皮をむくことができる」「グリップが握りやすい」「T型よりも収納しやすい」という感想が出た。使い慣れると、活躍してくれそうなピーラーだ。
ただし、使う人の手の動かし方、手の大きさ、力の強さなどでも、ピーラーの使い勝手は違ってくる。評価が高かったJは100円ショップの商品だったので、値段が高ければよいというものでもない。皮むきだけでなく、サラダ用にスライサーとして使う場合も、評価が違ってくる可能性がある。
本試験を通して、ピーラーは見た目や価格では使い勝手を判断できない商品であることを実感した。ピーラーの使用頻度が高い人は、実際に使い比べてみることをおすすめする。
(2015.04.28 食品料理部門)
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