今までの研究レポート

黒豆 時短のコツ①
おせち料理に欠かせない黒豆。時間がかかるから、上手にできないからと、手作りを敬遠している人も少なくないようだ。
少しでも気軽に、失敗なく作れるように、時短のコツを探った。
研究目的
豆料理の時短調理といえば、戻すときは炊飯器や電気ポット、煮るときは圧力鍋や電子レンジなど、道具を使っての工夫が多い。今回は特別な道具を使用せずに、普通の鍋で煮る方法で時短を検討した。
戻し方
黒豆の戻し方は、「たっぷりの水に浸して一晩おく」という方法がよく知られているが、その対極ともいえる「温めた調味液に、いきなり入れて戻す」という方法も多くの人に支持されている。その違いを調べてみた。
《豆と鍋》
黒豆 | 北海道産 平成25年度産の新豆 |
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鍋 | ステンレス製 直径20cm 容量3.2ℓ |
《方法》
戻し方は、表1に示す4通りの方法で行った。
豆20粒ずつをネットに入れて各戻し方につき14セットを用意し、合計300gになるバラの豆と一緒に、水や熱湯、重曹などを入れた鍋にいっせいに浸けた。室温に放置し、測定時間ごとに1セットずつ引き上げて重量を測定し、戻し率を求めた。(写真2)
写真2 : 豆をネットに入れて戻す
《結果》
戻し率の変化をみると、いずれの方法でも25時間後には2.1倍になった。
「水」の豆の戻りはゆるやかで、2.1倍になるには約6時間かかった(図1)。「水」で戻すなら、昔からいわれている通り、一晩浸ける必要がある。
「熱湯」は約1~2時間で戻ったが「重曹入り熱湯」はより早く戻った。これは、重曹に豆の繊維をやわらかくする働きがあるためである。
「調味料入り熱湯」は、初めは「水」よりも戻りが早かったものの、調味料の浸透圧の影響で吸水が遅れ、結局は2.1倍まで戻るのに一晩かかった。
皮の割れ
豆は、皮と実で戻るスピードが違う。皮よりも実が早く戻って膨れると皮が破れてしまい、通称「腹割れ」状態になる。おせち料理の一品として黒豆を作る場合は、この皮の割れは特に注意したいポイントである。
「水」と「熱湯」で皮割れ率を調べた。
《豆と鍋》
黒豆 | 北海道産 平成25年度産の新豆 (写真1・左) 丹波産 平成25年度産の新豆 (写真1・右) |
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鍋 | ステンレス製 直径20cm 容量3.2ℓ |
写真1 : 黒豆 北海道産(左) 丹波産(左)
《方法》
「水」または「熱湯」に入れて室温に放置し、北海道産は7時間に、丹波篠山産は24時間後に、皮が割れた数を数えた。
《結果》
丹波篠山産の皮割れの状態を写真2、3に示した。戻し方の違いによる皮割れ率は表3の通りである。
北海道産も丹波篠山産も、「水」の皮割れ率は「熱湯」の場合の1.7倍であった。
「熱湯」で戻した方がスピーディーなうえに(図1参照)、見た目もよい戻し方であることがわかった。
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写真2 : 「水」戻し | 写真3 : 「熱湯」戻し |
まとめ
黒豆の時短は、まずは戻し方がポイントになる。
今回の試験で、北海道産サイズの黒豆であれば『「重曹入り熱湯」に30分』が最短、かつ美しい戻し方であることがわかった。ただし、重曹は味に影響するため、この方法を試すときは分量に注意したい。
また、丹波篠山産のような大粒の豆や保存期間が長い豆は、戻し時間を長めに設定する必要があった。
豆に味を煮含める時間の短縮については、次の機会に報告する。
(2014.01.14 食品料理部門)
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