2015年研究発表
焼酎工場における黒麹菌類の調査とマイコトキシン産生能
日時・場所:2015年7月4日 東京農業大学 世田谷キャンパス |
発表者:○川上 裕司1)、横山 耕治2)、橋本 ルイコ3)、橋本 一浩1)、浅野 勝佳4)、陰地 義樹4)、北岡 洋平4)、小田 尚幸1)、渡辺 麻衣子5)、高橋 治男5)
1)(株)エフシージー総合研究所 IPM研究室 2)千葉県衛生研究所 3)奈良県景観・環境総合センター 4)千葉大学真菌医学研究センター 5)国立医薬品食品衛生研究所 |
緒言
黒麹菌の仲間Aspergillus section Nigri には、日本酒,焼酎,味噌,醤油,味醂,鰹節など和食文化に欠くことのできない多くの有用菌が存在する。一方で,肺アスペルギルス症のような深在性真菌症やMycotoxinによる中毒症などを引き起こす悪玉菌も沢山含まれている。演者らは,特に製造施設と外部環境の隔たりが少ない焼酎製造工場において,焼酎へのmycotoxin汚染が懸念される環境由来カビが存在するかどうかを調べることを目的として,各地の焼酎製造工場を調査した。この結果、真菌叢について一定の知見を得たので報告する。
調査場所および調査法
1)沖縄県名護市所在の老舗泡盛製造所(2011年5月24日)
2)第1回東京都八丈島の焼酎製造所・青ヶ島の青酎製造所(2012年12月17〜19日)
3)第2回東京都八丈島の焼酎製造所・青ヶ島の青酎製造所(2013年11月9〜12日)
4)長崎県壱岐の焼酎製造所(2014年10月10〜12日)
各製造場内および周辺屋外から浮遊菌と付着菌の採取を行った。いずれの採取もDG-18平板培地を使用した。単離・純培養したコロニーの形状と微細形態から菌株の同定を行った。一部の菌株についてはCytochrom b 遺伝子の解析による分類を行った。また,オクラトキシンA産生能を大麦による培養後,アセトニトリルと水(6:4)による抽出操作を行い,LC/MS/MS分析を行った。
調査結果
調査した各製造所から,それぞれ特徴あるAspergillus section Nigri が沢山分離された。中にはMycotoxinを産生する可能性のある菌種も分離された。しかしながら,検査した菌株はいずれもオクラトキシンA産生能は認められなかった。Cytochrom b遺伝子タイプは全て一般的な黒麹菌と同様のDNAタイプであった。調査を実施したいずれの焼酎製造所の焼酎については,環境由来の菌種からmycotoxin汚染する可能性は極めて低いと考える。
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