エフシージー総合研究所・フジテレビ商品研究所

2014年研究発表

住宅地と隣接する農地および住宅造成地におけるAspergillus fumigatus の分布調査・第2報

Distribution investigation of Aspergillus fumigatus on farmland and house creation ground that is adjacent to residential quarter <part 2>
○小田 尚幸1)川上 裕司1)橋本 一浩1) 1) (株)エフシージー総合研究所IPM研究室

○Hisayuki ODA *, Yuji KAWAKAMI *, Kazuhiro HASHIMOTO*, * Laboratory of Environmental Science, FCG Research Institute,Inc.

Abstract

Abstract: As for Aspergillus fumigatus that is the cause of the pulmonary aspergillosis, the isolation frequency as the indoor airborne fungi is known to be low. It is thought that a source a lot fungi including A. fumigatus is a soil. However, the isolation case with A. fumigatus from the soil around the house is few. Then, the distribution of A. fumigatus was examined for air in the farmland and the housing land development ground that was adjacent to the new residential quarter located in 21 cities in Kanagawa and Saitama, Tokyo suburbs. The investigation sampled 116 places. A. fumigatus of 35 strains was isolated from the 10 places in six citys. A. fumigatus showed a isolated tendency at the point where the soil was exposed like the field after the cultivated. This report suggested that high temperature was one of the factors of the isolation of A. fumigatus.

キーワード:
アスペルギルス フミガータス(Aspergillus fumigatus),空中(airborne),分布調査(Distribution investigation)薬剤耐性(drug-resistant)

緒言

 Aspergillus fumigatusは,深在性真菌症「肺アスペルギルス症」の原因菌として知られる一方で,室内浮遊真菌としての分離頻度は低く,およそ1〜3%程度であると考えられている。これは,医真菌学分野の見解とも一致している。近年,東京郊外や近隣地域では,農地を宅地化する傾向が高まりつつある。新興住宅地の場合,残された農地と新築住宅が隣接するような立地条件が極めて普通に見られる。このような場所では,風とともに畑の土壌が舞い上げられて,土壌中に含まれるカビ胞子が住宅内の侵入することが想定される。しかしながら,住宅周辺の土壌におけるA. fumigatusの調査報告例は少ない。演者らは,東京西部郊外の新興住宅地周辺の農地におけるA. fumigatusの分布調査を実施し,空気中から複数株が分離できたことを昨年報告した1)。しかしながら,東京近郊の新興住宅地における本種の分布実態は,未解明である。そこで,調査範囲を昨年の東京都下に埼玉県及び神奈川県を加えて,郊外の住宅地近隣農地における空気中のA. fumigatus分布調査を行った。この結果,近県の新興住宅地からもA. fumigatusが複数株分離されたので,分離傾向について報告する。

調査法

[調査日時]2014年8月〜10月(夏季〜秋季)の晴天日を選んで実施した。また,空気サンプリングは11:00〜17:00の日中に実施した。
[調査場所]以下の地域で調査を行った。
 東京都:国分寺市,小金井市,西東京市,三鷹市,府中市,小平市,町田市
 埼玉県:上尾市,東松山市,比企郡川島町,同郡嵐山町,大里郡寄居町,秩父郡長瀞町,同郡皆野町,秩父市
 神奈川県:横浜市,藤沢市,南足柄市
[調査法]116ヵ所からSASスーパー100CRエアーサンプラーを使って500L/回の空気をサンプリングした。平板培地はDG-18寒天平板培地を用いた。
[培養・同定法]
サンプリングしたDG-18寒天平板培地は,直ちに恒温器に入れて培養を開始した。培養温度は近縁種と高温耐性菌の繁殖を押さえるためにいずれも48℃とし,5日間培養した。発生した本菌集落をCP加PDA平板培地に移植して48℃で2日間,25℃で3日間純培養し,集落の形態および光学顕微鏡による微細構造の観察により本菌であることを確認(同定)した。

結果および考察

 調査の結果,10ヵ所から35株のA. fumigatusが単離された。単離された都市は,東京都:小金井市,西東京市,埼玉県:比企郡川島,比企郡小川町,大里郡寄居町,秩父郡皆野町であり,神奈川県の16ヵ所からは分離されなかった。また,8月16日と17日に行った調査にA. fumigatusの分離が集中していた。昨年の調査と比較すると本菌数が少ない傾向にあった。今年の調査結果は昨年示唆された分離傾向とは異なっていた。季節的な因子など何らかの影響があったのではないかと考える。今年の8月下旬から9月中旬の平均気温は昨年と比べて2℃以上低く,猛暑から急激な気温の低下があったが,これも要因の一つとして挙げられる。
 しかしながら,いずれの分離地点でも,地面が露出した箇所でサンプリングしているため,土壌の耕運と乾燥がA. fumigatusの飛散に繋がることが昨年同様に示唆された。

図1 Aspergillus fumigatusの顕微鏡像

おわりに
  「肺アスペルギルス症」の発症機序には,A. fumigatusが生産するマイコトキシンの関与が示唆されている。演者はGliotoxinと Verruculogenを産生するA. fumigatusを空気中から分離している2)。自然環境から分離されたA. fumigatus株のマイコトキシン産生能を分析することで,人への感染経路に繋がるのではないかと考えている。

引用文献
1)川上 裕司,小田 尚幸:東京郊外の住宅地と隣接する農地および住宅造成地におけるAspergillus fumigatusの分布調査,平成25年度室内環境学会学術大会 大会講演要旨集(2014).
2)橋本一浩,川上裕司,浅野勝佳,陰地義樹:空中浮遊Aspergillus属の季節消長とマイコトキシン産生量,日本家屋害虫学会第33回年次大会講演要旨集,18(2012).

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