2014年研究発表
真菌症フォーラム 第15回学術集会
環境中から分離されたA. fumigatusの薬剤感受性についての検討日時・場所:2014年2月8日 第一ホテル東京 |
発表者:○吉田將孝(1、泉川公一(1、川上裕司(2、橋本一浩(2、小田尚幸(2、平野勝治(1、大島一浩(1、武田和明(1、井手昇太郎(1、岩永直樹(1、峰松明日香(1、梶原俊毅(1、高園貴弘(1、小佐井康介(3、森永芳智(4、栗原慎太郎(3、中村茂樹(1、今村圭文(1、塚本美鈴(3、柳原克紀(4、田代隆良(5、河野 茂(1
1)長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 感染免疫学講座 (第二内科) 2) エフシージー総合研究所 IPM研究室 3)長崎大学病院 感染制御センター 4)長崎大学病院 検査部 5)長崎大学医学部 保健学科 |
背景
近年、アゾール系抗真菌薬に耐性を示すAspergillus fumigatusの増加が問題となっている。耐性獲得機序については解明されていないことも多く、アゾール系抗真菌薬に類似した構造を含む農薬の使用や、イトラコナゾールの長期投与が耐性化と関与しているとする報告がある。オランダを中心とする海外の報告では、環境分離株の中にもアゾール系抗真菌薬耐性A. fumigatusが確認されており、遺伝子学的にも臨床分離株に近いことが証明されている。本邦では環境中のA. fumigatusの薬剤感受性について検討した報告は少なく、アゾール系抗真菌薬耐性株の報告もない。
目的
環境から分離されたA. fumigatusの薬剤感受性を測定し、アゾール系抗真菌薬耐性株の有無を明らかにする。さらに、分離場所や地域と薬剤感受性の関連について検討を行う。
方法
エフシージー研究所に保存されている、関東を中心とした居住環境や土壌から分離されたA. fumigatus 122株を<削除:御提供いただき>、当科でCLSI 液体微量希釈法(M38-A2 2008)を用いて薬剤感受性試験を行った。
結果
MCFG、AMPH-B、5-FC、FLCZ、ITCZ、VRCZ、MCZについての薬剤感受性試験を行った。今回用いた122株の中にアゾール系抗真菌薬耐性の株は確認できなかった。ITCZやVRCZへの感受性が保たれている株が多くみられる反面、臨床分離株と比較すると、AMPH-Bへの感受性が低い株が存在していることが確認された。
考察
近年、外来でステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤の投与を受けている患者が増加しており、こういった患者では発症頻度は少ないものの深在性真菌症のリスクも高いと考えられる。環境中のA. fumigatusの薬剤感受性やその特徴を明らかにすることが重要であり、アスペルギルス感染症への対策における一つの指標になりうる。今後さらに環境分離株の数を増やして、検討を行っていく。
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