エフシージー総合研究所・フジテレビ商品研究所

2013年研究発表

室内環境学会学術大会

東京郊外の住宅地と隣接する農地および住宅造成地におけるAspergillus fumigatus の分布調査
Distribution investigation of Aspergillus fumigatus on farmland and house creation ground that is adjacent to residential quarter in Tokyo suburbs
日時・場所:2013年12月5日〜6日 アルカスSASEBO
発表者:○川上 裕司1),小田 尚幸1)2)
1)(株)エフシージー総合研究所 IPM研究室,2)日本大学生物資源科学部 応用昆虫学研究室

Abstract: As for Aspergillus fumigatus that is the cause of the pulmonary aspergillosis, the isolation frequency as the indoor airborne fungi is known to be low. It is thought that a source a lot fungi including A. fumigatus is a soil. However, the isolation case with A. fumigatus from the soil around the house is few. Then, the distribution of A. fumigatus was examined for the farmland and the housing land development ground that was adjacent to the new residential quarter located in three cities in Tokyo suburbs. The investigation sampled the soil in 30 places and air in 120 places. A. fumigatus of 11 strains was isolated from the soil in nine places. In the air investigation, A. fumigatus from 26 to 55 strains was isolated. A. fumigatus showed the tendency to be isolated in the air of the point where the soil had been exposed like the field after it had cultivated it a lot. A. fumigatus is usually existing in the soil around person's life environment by the main enumeration became clear.

長崎県佐世保市で12月5、6日に開催された「室内環境学会学術大会」で、①「東京郊外の住宅地と隣接する農地および住宅造成地におけるAspergillus fumigatusの分布調査」「トラックコンテナの微生物汚染調査および殺菌対策に関する研究」という演題で発表しました。
キーワード:東京郊外(Tokyo suburbs),アスペルギルス フミガータス(Aspergillus fumigatus),分布調査(Distribution investigation),肺アスペルギルス症(pulmonary aspergillosis)

1.緒言

 肺アスペルギルス症の起因菌であるAspergillus fumigatus (以下,本菌と称する)は,室内浮遊真菌としての分離頻度は低く,大体1〜3%程度である。この傾向は医真菌分野の研究者の一致する意見である。しかしながら,演者は本菌が東京都内の住宅で夏季に一時的に浮遊濃度が高くなる事例や肺アスペルギルス症患者宅の寝室の空気中に高濃度で浮遊している事例を報告している1)。真菌(カビ)の元々の繁殖源を辿れば土壌であることは周知の事実であるが,住宅周辺の土壌からの本菌の分離事例は少ない。近年,東京郊外では少子高齢化に伴って,農地を保有することが困難になり,農地を宅地化する傾向が高まりつつある。新興住宅地の場合,残された農地と隣接して新築住宅が建てられ,住宅の1〜2m先に畑があるような立地条件が極めて普通に見られる。このような場所では風とともに畑の土壌が舞い上げられて,土壌中に含まれるカビ胞子が住宅内の侵入することが想定される。以上のような背景を踏まえて,東京郊外の西部に位置する小平市,国分寺市,立川市の新興住宅地を対象として,隣接する農地,宅地造成地の空気および土壌からの本菌の分離を試みた。この結果,土壌と空気中から本菌が分離されたので,分離傾向について報告する。

2.調査方法

[調査日時]2013年7月1日〜9月29日の夏季に土壌サンプリング5回,空気サンプリング8回実施した。サンプリングは,晴天日の11:00〜17:00の間に行った。

[調査場所]東京郊外の五日市街道付近に位置する東京都小平市上水本町・津田町・小川町,国分寺市北町・並木町・戸倉,立川市若葉町・幸町の8つの地域に立地する農地およびそれに隣接する住宅造成地と児童公園を調査対象とした。

[調査法]①土壌は合計30ヵ所からサンプリングした。移植ゴテを使って表層から深さ10cmの土壌を約250gのサンプリングし,缶詰のコーンを用いた釣り菌法により25℃で7日間培養して本菌をコーンに釣りだした。②空気は合計120ヵ所からサンプリングした。SASスーパー100CRエアーサンプラーを使って空気を500L/回サンプリングした。培地はDG-18寒天平板培地を用いた。

[培養・同定法]
 ①カビが繁殖したコーンは滅菌チューブに移し,リン酸緩衝生理食塩水を加えてタッチミキサーを使って洗い出し,洗浄液をCP加PDA平板培地に塗沫して培養を開始した。②空気をサンプリングしたDG-18寒天平板培地は直ちに恒温器に入れて培養を開始した。培養温度は他の菌種の繁殖を押さえるためにいずれも47℃とし,5日間培養した。発生した本菌集落をCP加PDA平板培地に移植して48℃で7日間純培養し,集落の形態および光学顕微鏡による微細構造の観察により本菌であることを確認(同定)した(図1)。

3.結果および考察

 土壌サンプルは,サンプリング地点の1/4以上である9ヵ所から11株の本菌が分離された。分離地点の内,約半数の5ヵ所は作物を植える前の耕運された畑であった。
 空気サンプルは,26ヵ所から55株の本菌が分離された。空気サンプリングで得られた集落は,第1回,第5回調査で,それぞれ12ヵ所23株,20ヵ所25株であった。第2回,第3回調査では9ヵ所0株,18ヵ所1株であった。このように,空気サンプリングは,調査日によって分離される本菌の分離数に偏りが見られた。耕運後の畑や未作付け箇所のある畑の付近よりサンプリングした空気サンプルと土壌サンプルから,本菌が多く分離される傾向があった。これは,土壌を掘り起こすことが影響していると考える。今回の調査地点は,いずれも住宅地に隣接する場所であり,本菌が人の生活環境周辺の土壌中に普通に存在していることが明らかとなった。

図1 Aspergillus fumigatusの顕微鏡像

おわりに

 本菌が「肺アスペルギルス症」を発症させる感染機序には,マイコトキシンの関与が示唆されている。本菌は14種類ものマイコトキシンを産生することが知られており,演者らはGliotoxinと Verruculogenを産生する本菌を空気中から分離している2)。今回分離した菌株についてもマイコトキシン産生能を分析し,本菌の人への感染機序の基礎研究につなげていきたいと考えている。

引用文献
1)川上裕司,高橋佑子:肺アスペルギルス症患者宅の室内浮遊真菌調査,室内環境,10(2),155-162(2007).
2)橋本一浩,川上裕司,浅野勝佳,陰地義樹:空中浮遊Aspergillus属の季節消長とマイコトキシン産生量,日本家屋害虫学会第33回年次大会講演要旨集,18(2012).

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