エフシージー総合研究所・フジテレビ商品研究所

2013年研究発表

日本家屋害虫学会第34回大会

家屋害虫に感染する微胞子虫と衛生学的重要性
日時と場所: 2013年6月22日 日本大学生物資源科学部
発表演題と発表者: 家屋害虫に感染する微胞子虫と衛生学的重要性
小田 尚幸1), 2),畠山 吉則1) ,橋本 一浩2) ,川上 裕司2) ,岩野 秀俊1)
1)日本大学生物資源科学部 応用昆虫学研究室
2)(株) エフシージー総合研究所 IPM研究室

要旨

 微胞子虫は細胞内偏性寄生性の単細胞真核生物である。原生動物として古くから分類されてきたが,近年の研究から,通常のカビ(糸状菌)やキノコ(担子菌)とは全く異なる生活環を有する非常に特殊化した菌類の一群であると考えられている。微胞子虫の感染様式は,胞子に内在する「極糸」と呼ばれる微細な管を用いて宿主細胞へ侵入することで感染が成立する。宿主細胞内での生活環は,増殖を行う栄養繁殖期と増殖後の胞子形成期に大きく分かれる。生活環における核の数,胞子形状,胞子形成数などによって種の分類が行われ,現在までに170属1,500種が報告されている。

 昆虫感染性微胞子虫の報告は多く,チョウ目,コウチュウ目など,さまざまな昆虫で感染が確認されている。有用昆虫であるカイコでは,Nosema bombycisが微粒子病を引き起こし,ミツバチではN. apisがノセマ病を引き起こして,絹糸や蜂蜜の生産量に悪影響を与えている。これらの有用昆虫以外の家屋害虫からも感染事例があり,たとえば,貯穀害虫ではノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)に感染するN. heterosporum,コウチュウ目のコクヌストモドキ(Tribolium castaneum)に感染するN. whiteiなどが確認されている。さらには衛生害虫としてイエカ(Culex pipiens)に感染するN. algeraeとショウジョウバエの一種であるDrosophila willistoniからはN. kingiなどが報告されている。また,Nosema属の他にもイエカ(Culex pipiens)に感染するPleistophora culicis,ブユ科昆虫に感染するP. leaseiP. lutziが報告されている。

 微胞子虫は昆虫以外の感染も確認されており,魚類ではウナギのベコ病の原因であるP. anguillarumが知られている。哺乳類ではウサギエンセファリトゾーン症を引き起こすEncephalitozoon cuniculiを初めとして,ウシやサルなどに十数種の感染が見られている。他にも甲殻類,鳥類に及ぶ非常に広い感染域を持つ生物群である。

 Encephalitozoon属はHIV感染者への日和見的な感染性が確認されており,同様にEnterocytozoon属やAnncaliia属(=Nosema属)など8属14種にヒト感染が報告されている。Pleistophora ronneafieiではヒトの筋肉への感染が確認されている。このように,微胞子虫の中には人獣魚虫をまたいで感染する属がいくつか確認されている。現在のところ,人獣魚虫共通感染性を有する微胞子虫種・株は確認されていない。しかしながら,今後広い宿主域を有した種が発見される可能性もあるため,感染機構の研究や幅広い生物での感染性の確認が望まれる。今後,演者らは,今まで知られていない感染ルートや人獣共通感染種の存在の有無について研究を進める予定である。

 本報告では,1)微胞子虫の生物学的な特徴と感染域,2)家屋害虫への感染事例,3)ヒトをはじめとする哺乳動物への感染事例を挙げ,衛生学的重要性を踏まえた研究の必要性について考察する。

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