エフシージー総合研究所・フジテレビ商品研究所

2013年研究発表

日本家屋害虫学会第34回大会

原発被災区域の住宅におけるカビ汚染
日時と場所: 2013年6月22日 日本大学生物資源科学部
発表演題と発表者: 原発被災区域の住宅におけるカビ汚染
○橋本 一浩1), 篠原 直秀2), 風間 美冴3), 関根 真4)
, 徳村 雅弘4) , 川上 裕司1)
1)(株)エフシージー総合研究所 IPM研究室,2)産業技術総合研究所,
3) 東洋大学,4) 横浜国立大学

1.緒言

 2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故により,周辺の市町村は警戒区域として立ち入りが禁止された.2012年4月16日,線量の低い一部の地域では,日中の帰宅のみが許される居住制限区域となった.この地域の住宅は,長い間,人が立ち入ることができず放置されたためにカビが発生し問題となっている.極度のカビ汚染が進んだ場合,帰宅制限が解除された後に,住民の健康への影響が懸念される.このことから,本研究では,原発から15km圏内に位置する南相馬市小高区の住宅を対象として,室内のカビ汚染状況について調査を行った.

2.方法

 福島第一原子力発電所から15 km前後の場所に位置する戸建住宅5軒(いずれも南相馬市小高区内)を対象とした.警戒区域指定解除後に毎週帰宅している住宅が1軒(住宅A),東日本大震災以降一度も帰宅していない住宅が1軒(住宅B),数回帰宅した住宅が2軒(住宅C, D),一度帰宅した住宅が1軒(住宅E),津波により1階部分が全て流された住宅が1軒(住宅F)であった.住宅AとBは,通りを挟んだ向かいの住宅である.調査は,2012年8月末に行った.
 各住宅の空中浮遊真菌(カビおよび酵母)を捕集・分離した.浮遊真菌の捕集は,エアーサンプラー(SAS SUPER 100; Pbi International -Italy-)にDG18寒天平板培地を取り付け,それぞれの測定地点で20〜50Lの空気を吸引することにより行った.サンプリングは住宅1軒につき,リビングダイニング5地点,屋外1地点とした.DG18平板培地は実験室へ持ち帰り,25℃下で7〜10日培養し,培地に発生した真菌集落を計数して,1m3 当たりの浮遊真菌数を算出した.発生した集落をMEA培地,CYA培地などにおいて二次培養を行い,集落の形態,光学顕微鏡による形態観察から種・属を同定した.

3.結果と考察

 住宅B及び住宅Eでは,室内空気中の真菌濃度が極めて高く,捕集した真菌濃度が,検出上限 (52,700 CFU/m3)を超えていた.震災後の帰宅回数が多いほど,室内のカビ濃度が低くなる傾向が見られた.津波被災住宅は,1階部分が壊されているため外気の流入が多く,空中の真菌叢も外気に影響されていた.菌種としては,Cladosporium spp.やPenicillium spp.など一般の住宅で普通に見られる真菌が全ての住宅に共通して分離された.真菌濃度が検出上限を超えた住宅B及び住宅Eでは,特にPenicillium spp. による高濃度汚染が顕著であった.また,この2軒では,Aspergills section Circumdatiが 1,000~2,000 CFU/m3に達していたが,通常の住宅におけるsection Circumdatiの空気中濃度は1.0 CFU/m3程度であり,特徴的だったと言える.Section Circumdatiは,腎毒性を有するオクラトキシンAを産生することが知られており,今後,より詳細な評価が必要である.

謝辞 本研究は,(財)前田記念工学振興財団 平成24年研究助成「東日本大震災における津波被災住宅改築のためのフェントン反応を用いた新規防カビ防虫技術の開発(篠原直秀)」により行われました.謝意を表します.

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