2013年研究発表
日本マイコトキシン学会 第72回学術講演会
日本国内にて分離された Aspergillus section Circumdati のオクラトキシン類産生性日時と場所: | 2013年1月11日 東京家政大学 板橋キャンパス |
発表演題と発表者: |
日本国内にて分離された Aspergillus section Circumdati のオクラトキシン類産生性 橋本 一浩1),川上 裕司1),渡辺 麻衣子2),横山 耕治3) 浅野 勝佳4),陰地 義樹 4),鎌田 洋一2),高橋 治男2) 1)(株)エフシージー総合研究所 IPM研究室,2)国立医薬品食品衛生研究所 3)千葉大学真菌医学研究センター4),奈良県保健環境研究センター |
要旨
Aspergillus section Circumdati (A. ochraceus group) は代表種 A. ochraceus を始め,A. melleus,A. scleotiorum,A. steynii,A. westerdijkiae などが属し,一部の種がOTA・OTBなどオクラトキシン類やPenicillic acidなどの代謝産物を産生することが知られている。これらは形態的に類似しており,遺伝子情報やマイコトキシン産生性を併せた総合的な判断を基に種が同定されている。オクラトキシンの名が示す通り,従来,A. ochraceus がOTA産生種の象徴的な存在であったが,近年,A. westerdijkiae を始めとしたOTA産生能を持つ複数のsec. Circumdati が新種として報告された。過去にA. ochraceus と同定してきた菌株について再同定を実施した場合,数多くの菌株がsec. Circumdati 近縁種に訂正される可能性が示唆されている。
今回,エフシージー総合研究所で保存しているsec. Circumdati 計103株について遺伝子解析とマイコトキシン産生性の分析を行った。103株はいずれも日本国内で分離された菌株で,その内訳は,タバコシバンムシ由来60株,ノシメマダラメイガ由来11株,空気中由来26株,土壌由来5株,手さげバッグ由来1株である。遺伝子解析ではミトコンドリア・チトクロームb(Cytb)遺伝子,26SrRNA遺伝子D1/D2領域,β-tubulin遺伝子の塩基配列を決定し,3通りの遺伝子領域についてDNAタイプを分類した。また,103株を大麦で培養・抽出し,OTAおよびOTBの産生量をLC/MS/MSにて定量した。
結果, Cytb遺伝子のタイプはAO-D-1, AO-D-2, AO-D-3, AO-D-3-2, AO-D-4,AO-D-5およびAO-D-6の7通りに分類され,103株中81株(78.6%)がAO-D-4であり,A. westerdijkiae CBS112803(Type strain)と一致した。A. ochraceus CBS10808(Type strain)はAO-D-2と一致したが,AO-D-2に分類された菌株は103株中3株(2.9%)であった。多量のOTA・OTBを産生する菌株はAO-D-4に集中し,このタイプにおけるOTA検出株は81株中69株(85.2%),平均OTA産生量は1910μg/麦5gであり,OTB検出株は81株中54株(66.7%),平均OTB産生量は235μg/麦5gであった。AO-D-2ではOTA検出株が3株中1株(33.3%),平均OTA産生量は0.7μg/麦5gであり,OTBは検出されなかった。それ以外の遺伝子タイプに分類された菌株のOTA産生量はいずれも検出下限を下回った。
D1/D2においても,多量のOTAを産生するグループ(A. westerdijkiae)とそれ以外のOTA非産生・弱産生のグループに大きく分かれた。β-tubulinにおいても同様の傾向であった。
以上の結果から,日本国内(特に室内環境中)に分布するオクラトキシン産生能を持つsec. Circumdati の多くがA. westerdijkiae であると推察する。
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