今までの研究レポート
かかと角質ケア商品の性能評価

自宅で簡単にかかと角質ケアが出来る商品がメーカー各社から販売されています。実際に使用して、それぞれの使用感と効果を検証しました。
はじめに
目に鮮やかな新緑の季節とともに装いが軽やかになると、にわかに気になり出すのが足元。そして「かかと」です。冬の間に、かかとは乾燥し、硬くなったり、白く粉をふいたような状態になります。人によっては、ひび割れて何本もの白い線が深く刻まれて深刻な状態になる場合もあります。そのような「かかと」でストッキングや靴下を履き、ひっかかりを感じた経験をもつ女性も多いと思われます。女性にとってツルリとしたかかとは理想であり、美脚を目指してフットケアサロンを利用する人も多いですが、自宅で手軽に手入れができるという「かかと角質ケア用品」の品揃えが多くなっていることからセルフケア派も増えています。
本研究では、タイプの異なる「かかと角質ケア商品」4タイプ計6点について、使用感と性能について評価しました。
試験概要
角質軟化タイプ(2点)、角質軟化+自然剥離タイプ(1点)、角質軟化+削るタイプ(1点)と古典的な道具を使った削るタイプ(2点)の合計6点を購入し、実際に使用して使用感評価と画像撮影でかかとの経過観察を行ない、その効果と使用上の注意点を調べました。
試験品
タイプⅠ 角質軟化 |
① キリバイ かかとちゃん(桐灰化学) ② ライオン 休足時間かかとぷるぷるシート(ライオン) |
---|---|
タイプⅡ 角質軟化+自然剥離 |
③リベルタ ベビーフット(リベルタ) |
タイプⅢ 角質軟化+削る |
④ ドクターショール ハードスキンリムーバー(レキットベンキーザ・ジャパン) |
タイプⅣ 削る |
⑤ ヤスリ: マリーナハウス セラミックフットファイル(シャンティ) ⑥ 軽石: 無印良品 シルクパウダー配合軽石(良品計画) |
試験項目
1.使用感評価
女性研究員5名が試験品を使用し、「かなり良い」から「かなり悪い」の7段階で評価する。
2.効果評価試験
研究員1名につき、左右の足それぞれに2種類の試験品を使用し、2週目までのかかとの変化を経過観察する(クリームを塗るなどのケアはしない)。
試験結果
1.使用感評価
女性研究員5名による使用感評価(7段階評価)の結果を(図1)に示します。
タイプによって各項目に対する評価傾向は異なりました。
タイプⅠ(①②)は、就寝時に履くだけ・貼るだけの使用が簡単な商品であり、肌への刺激がないことから「使い勝手」や「肌への刺激」の項目で高い評価を得ました。保湿や保温により角質をやわらかくする商品なので、翌日のかかとの状態「なめらかさ」「やわらかさ」「うるおい感」は良好になりましたが、効果は持続せず同日夜には元に戻り7日目の評価は悪くなりました。角層が取れるわけではなく、劇的な変化が見られないため「総合評価」は中程度でした。
タイプⅡ(③)は、専用液の入ったブーツ型ビニール容器に1時間足を浸けるものです。履くだけなので操作は簡単ですが、その間行動が制限されたり、冷たい液に浸すので冬場の使用には不快に感じることもあり「使い勝手」や「肌への刺激感」の評価は一番悪くなりました。翌日は特に変化は見られず、3~4日目から角質が剥け始め、1~2週間は剥け続けました。その間、室内に角質が落ちたり、靴下の中にぼろぼろと付いたりと不快に感じる点もありましたが、角質の皮が剥がれて肌表面がしっとりスベスベになり始め、目に見えて効果を感じてくる7日目では、かかとの状態「なめらかさ」「やわらかさ」「うるおい感」や「総合評価」は、一番高い評価になりました。
タイプⅢ(④)は、専用液をコットンにつけ、かかとなど角質の厚い部位に塗布した後、付属のヘラで表面の角質を削り取るものです。軽い力で簡単に削れ、削り取った角質が目に見えるので、効果を実感しやすく「角質の取れ感」の評価は一番高くなりました。削り取る割にはかさつきがあまり気にならず、翌日のかかとの状態「なめらかさ」「やわらかさ」も高い評価を得ました。しかし、7日目にはかさつきが目立ち、使用前よりやや悪いという評価になりました。「総合評価」はタイプⅡ(③)に次いで2位でした。
タイプⅣ(⑤⑥)は、物理的に古い角質を削り取る従来からある商品です。浴室などで手軽に簡単に使え、目に見えて角質が取れることを実感できるので、「使い勝手」「角質の取れ感」の評価は高くなりました。使用直後はスベスベとした仕上がりになりましたが、日が経つにつれ表面が白く硬くなり使用前よりもかさつきが目立ちました。7日目のかかとの状態「なめらか」「やわらか」「うるおい感」の評価は最も悪くなり、「総合評価」も一番悪い評価となりました。
2.効果評価試験
2-1.試験方法 | ||
究員1名につき、2種類の試験品を左右の足それぞれに使用し、2週間のかかと部位の計測と肌状態の経過観察をする。クリームを塗るなどのケアはしない。計測は蒸しタオルで拭き30分後に行なう。 | ||
2-2.パネルと使用商品 | ||
研究員3名 30代女性 タイプⅠ(③ ベビーフット) vs. タイプⅢ(④ ドクターショール) 40代女性 タイプⅡ(① かかとちゃん と ② 休足時間)の比較 50代女性 タイプⅣ(⑤ ヤスリ と ⑥ 軽石)の比較 |
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2-3.使用方法 | ||
各商品の使用説明書に準じて以下の通りとした。 ・ タイプⅠ①は毎晩2週間連続使用。 ・ タイプⅠ②は1日おきに4回使用(1週のみ使用)。 ・ 上記以外の商品は1回の使用。 |
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2-4.測定項目 | ||
(1) | マイクロスコープ かかとの中央部と内側部を20倍で撮影する。 |
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(2) | 写真 椅子に座り両脚をまっすぐ伸ばした状態で、つま先を垂直に立て両足裏全体を撮影する。片足ごとに、かかと部分をトリミングして評価写真とする。 |
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(3) | 角層水分量 かかと中央部を7回測定した平均値。 |
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(4) | 角層水分蒸散量 かかと中央部を2回測定した平均値。 |
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(5) | タイプⅡ(③ ベビーフット)の足状態変化 | |
2-5.測定回数 | ||
5回(使用前、翌日、3日目、1週目、2週目) | ||
2-6.環境条件 | ||
温度25℃、湿度50%に設定した環境試験室 | ||
2-7.結果 | ||
(1) | マイクロスコープ画像 かかと中央部とかかと内側部の画像を(表2)に示します。 表中の○で示したところは、かかとの肌状態が使用前に比べて顕著に良好な状態になったことを示しています。 タイプⅡ(角質軟化+自然剥離)の③とタイプⅢ(角質軟化+削る)の④は、2週目もしっとりスベスベした状態が見られ効果が長続きしていることがわかりました。タイプⅠ(角質軟化)の②とタイプⅣ(削る)の⑤⑥は、翌日の状態が良くなりましたが効果は続かず3日目以降は元に戻りました。 |
(2) | 写真 かかとの写真を(表3)に示します。 タイプⅡ(角質軟化+自然剥離)の③は、2週目にも潤いのあるスベスベした状態で効果が長続きしていることが分かりました。タイプⅠ(角質軟化)の②とタイプⅢ(角質軟化+削る)の④は、一時かさつきが軽減しましたが1週目、2週目には、また白くかさつきが目立ってきました。 |
(3) | 角層水分量 かかと中央部の水分量の変化率(使用前を0として)を(図2)に示します。 |
タイプⅠは、翌日が少し変化するだけで、その後はほぼ変化ありませんでした。 ①と②を比べると、①はほとんど変化がなく、②はわずかに増加した状態で2週目まで持続しました。 タイプⅣは、3日目や1週目に大きく増加がしましたが、2週目にはほぼ使用前と同じレベルまで減少しました。 ⑤ヤスリと⑥軽石を比べると、⑥は3日目に大きく上昇しますが、2週目には⑤とほぼ同じ状態まで戻り、水分量の増加は一時的であることがわかりました。⑤⑥とも、さらに時間が経過すると使用前より水分量が減少すると予測されます。 タイプⅡの③とタイプⅢの④は、いずれも大きく増加しました。 ③は翌日わずかに減少したものの、その後は2週目まで増加し続けました。④は翌日の増加が最も大きくその後減少しましたが、2週目は前週とほぼ同じ水分量となり肌状態が維持できていると予測できます。 ③は皮が剥けてきれいな状態になるのに2週間を要したため、2週目の水分量が最大になったと考えられます。 以上の結果から、削らないタイプⅡの③が一番、うるおいのあるかかとの状態が長続きし、次いでタイプⅢ(角質軟化+削る)の④も使用前より水分量が増加し、潤いのあるかかとになったと言えます。 |
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(4) | 角層水分蒸散量 かかと中央部の水分蒸散量の変化率(使用前を0として)を(図3)に表します。 |
タイプⅠは、①②がほとんど同じように変動しました。 いずれもわずかな増減(±20%)を繰り返しながらも、使用前とほとんど変わりませんでした。 タイプⅡの③とタイプⅢの④は、正反対の変動を示しました。 ③は大きく減少し、使用前に比べて水分蒸散量が減少し、肌状態の改善がうかがえます。一方、④は翌日に増加しそのままの状態を維持しました。つまり、肌状態は一時的に悪化し、その状態を保ったと考えられます。 タイプⅣは、⑤⑥がほとんど同じように変動しました。 いずれも翌日には一旦減少しましたが、以降は2週目まで加速度的に増加を続けました。つまり、削ることで翌日には肌状態が改善したかのような状態になりましたが、強制的に削ったことで、加速度的に肌状態が悪化の方向に進んでいったと考えられます。 以上の結果から、水分量の変化の結果と同様、削らないタイプⅡの③が使用前より減少し肌のバリア機能が高くなり(肌状態が良好になった)、削るタイプの④⑤⑥は使用前より肌のバリア機能が低下(肌状態が悪化)したことがわかりました。 |
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(5) | タイプⅡ ③ ベビーフット 足の状態変化 1.使用直後の足の変化 本商品にはエタノールが配合されているため(写真1)のように、使用直後は、足裏だけでなく、脚の甲、くるぶし、足首まで赤くなりました。半日で皮膚の赤味は元に戻りましたが、アルコールに弱い人は使用を避けた方が良いでしょう。商品の注意事項には、「使用前には必ずパッチテストを行い肌への異常がないか確認することが必要です」と表記されていますが、アルコールに弱い方への特記事項がないので、使用の際には注意が必要です。 |
2.使用2週目までの足裏の変化 本商品は角質の硬いかかとだけでなく、足裏全体を専用液で浸漬するため、足裏全体(皮膚の柔らかい土踏まずや指の間なども含む)の皮が剥けました。皮が剥けた直後の部位は、無理に剥がしたりすると足の皮膚がただれるなど肌トラブルの原因にもなります。また、歩行の際には靴下を履くなどして足を保護する必要がありました。 |
使用後、日にちが経って皮が剥けはじめた頃、少しでも痛みや違和感がある場合は皮膚科専門医の診察を受けることをお薦めします。 酸を使ったフットケア商品については、東京都生活文化局より<危害・危険情報>
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まとめ
表8に商品の使用評価と効果評価をまとめました。
表8に商品の使用評価と効果評価をまとめました。
タイプ別の特徴は以下の通りでした。
タイプⅠは、サポーターや保湿ジェルシートを1晩着装し保温や保湿により角質をやわらかくします。履くだけ、貼るだけなので肌への刺激はなく、使用は簡単です。ただ、古い角質を取るわけではないので劇的な変化はありません。使用し続けることでかかとの状態を良好に維持するというタイプです。
⇒ 肌の弱い人に向きます
タイプⅡは、使い勝手がやや面倒で、剥け終わるまで時間はかかります。しかし、実際に皮が剥けるのを目にするので古い角質の取れ効果が実感できます。肌がしっとりスベスベになり、その状態は4タイプの中で一番長く続きます。ただし、足裏全体の皮が剥けるので、肌の弱い人は使用を避けるべきです。
⇒ かかとの角質が厚く硬い人、肌の丈夫な人に向きます
タイプⅢは、専用液で角質をやわらかくしてから、付属のヘラで表面の角層を削り取ります。待ち時間が約5分と短いため効率が良く、ヘラ上に古い角質の取れ感が目に見えるので効果が実感できます。同じ削るタイプのⅣよりも良好な状態が持続します。
⇒ かかとの角質が厚く硬い人、短時間で仕上げを望む人に向きます
タイプⅣは、物理的に古い角質を削り取るため手軽に簡単に使えます。角質も取れて使用直後はスベスベ状態になります。しかし、次第にかさつきが目立ってきて効果は長続きせず、かえって悪化させる場合もあります。
⇒ 短時間での仕上げを望む人に向きます
いずれのタイプを使用しても、時間が経過すると再び乾燥が進みます。しっとりと潤いのあるかかとをキープするには、かかと角質ケア商品の使用の後に保湿クリームなどを塗って、しっかり保湿することが大切です。
また、体調や体質によっては肌トラブルを引き起こしてしまう場合もあります。専用液に浸漬する商品は必ずパッチテストを行なってから使用し、少しでも痛みや違和感があればただちに使用をやめ、医療機関を受診して下さい。
(2014.04.30 美容・健康・料理研究室)
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