
カビから絵画を守るためには
2010.10.01
暮らしの中で目につくカビで、見つけた時に大きなショックを受けるのは皮製品と絵画に生えたカビではないだろうか。
日本は高温多湿な自然環境から、「紙・絹・木などの脆弱な素材が多い美術品や絵画」のカビによる被害は深刻であった。そのため、美術館では文化財燻蒸ガスとして臭化メチルを含む燻蒸剤が広く使用されてきた。ところが、オゾン層保護のため、臭化メチルが2004年末に全廃され、高価な絵画を収蔵する美術館は、カビ被害からいかに保護するかという、大きな課題を抱えている。
さて、実際にカビの発生を防ぐための手段としては、第一に多湿を防ぐことが挙げられる。乾燥に強いカワキコウジカビ(Eurotium spp.)やアズキイロカビ(Wallemia sebi)は絵画にも発生するが、繁殖し始める相対湿度は62〜63%。よって、室内の湿度をこれ以下にすれば良いのだが、実際にはそう簡単にはいかない。最近の住宅は、高断熱高気密で魔法瓶のような形態が主流である。ところが、玄関、収納庫(押入れ)、北西にある寝室などは結露ができやすく、高湿度になることが多い。そう考えると、一般の住宅で大切な絵画を守るためには、決して仕舞わないことである。

アスペルギルス ペニシロイデス(Aspergillus penicillioides)
風通しが良く、湿気の少ない場所に掛けて置き、休日には換気すること(玄関に掛けるのは厳禁)。そして、月に1度は、絵画の額・裏側・画面に積もる塵埃を綿棒などで丁寧に除去することが決め手である。
エフシージー総合研究所 川上 裕司
