
数億円の賃借料削減目指す
あいおいニッセイ同和損害保険
新型コロナは世界を劇的に変えた。衝撃は大きく、コロナ前に戻る意思さえ吹き飛ばした。逆にそれは、「新たな扉」が開いたことでもある。会社はどう生き抜いていくのか。その「カタチ」を模索してみる。
産業経済新聞社・夕刊フジ | |
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コーナー | 「コロナが変えた会社のカタチ」 |
取材先 | あいおいニッセイ同和損害保険 業務プロセス改革部部長 矢澤雅之氏 |
新聞発行日 | 2020年11月12日(木) |

【プロフィール】
やざわ・まさゆき
1994年中央大卒、横浜銀行入行。2004年あいおい損害保険(現あいおいニッセイ同和損害保険)入社。経営企画部に配属。企業広報部、経営企画部企画グループ長などを経て20年4月から現職。「企業のデジタル化推進」などをテーマに講演会多数。趣味のゴルフはシングルの腕前。49歳。
【あいおいニッセイ同和損害保険】
「3メガ損保」のひとつ、MS&ADインシュアランスグループHDの傘下企業。20Ⅰ0年あいおい損害保険とニッセイ同和損害保険が合併して誕生した。「タフ・つながるクルマの保険」など商品名の「タフ(TОUGH)」は、保険商品として一番大切な「迅速」「頼れる」「優しい」存在でありたいという思いを込めている。代表取締役社長/金杉恭三。
本社オフィス使用面積半減へ
企業を取り巻く環境は、業種によっては年々厳しくなり、新型コロナウイルスの発生でさらに激変している。
ひとつは、少子高齢化に伴い、日本の労働人口が減少しつつあるからだ。そんな中、企業に求められているのが、今の業務をより少ない人数で対応できるよう工夫をしていく、生産性の高い働き方への転換だ。
損保業界を例に挙げれば、近年の大型台風や地震、集中豪雨などの自然災害による顧客への保険金の早期支払いが大きな課題となっている。
あいおいニッセイ同和損害保険は、こうした外部環境の著しい変化に対応するため、金杉恭三(かなすぎ・やすぞう)社長が就任した2016年から、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取組み、業務フローのデジタル化やRPA(ソフトウエアのロボットによる業務自動化)の活用による業務改革に乗り出している。
具体例を紹介する。
経理部では、全国の営業拠点で発生する膨大な量の保険料の精算について、これまでは書類の入力作業を営業拠点と本社で二重に行っていた。書類に誤りがあることも多く、そのたびに営業拠点とのやり取りが発生した。
現在は、「報告書を作る作業を経理部門のRPAが担うようになり、業務の効率化とスピードもアップしました」
業務プロセス改革部の矢澤雅之部長はそう話す。
入金明細や精算データの収集、精算状況の調査、報告内容の確認、データの消し込みなどを自動化。経理部門の業務量を年間で約4万時間削減することができた。
基本は、定常業務を徹底的に「やめる・なくす・へらす」こと。DXへの取組みで、本社部門では2021年度末には約3割の業務量削減を目標に掲げる。顧客対応など「社員にしかできない仕事」に集中できるようになり、一層サービスを強化することで、新たな価値を生み出していく。
このような変革が進む中、新型コロナウイルスが発生。これを契機に在宅勤務が大幅に増えたことに対応し、本社オフィスの使用面積の半減をにらんだ、場所にとらわれない新たな働き方を定着させることを目指す。
具体的には、東京・恵比寿にある本館に本社機能を集め、空いた別館のオフィススペースに近隣ビルに分散するグループ会社を集約し、数億円の賃貸料削減を目指している。本社内は対面の必要がない会議はオンラインを原則とし、稟議(りんぎ)書のペーパー・印鑑レスも推進し、新しい働き方にもチャレンジしている。
現在、本社の出社比率は原則50%。オンライン会議はコミュニケ—ションが希薄になりがちだが、「オンライン会議開始前の約10分間をメンバーの日々の情報交換の場とするなどの、コミュ二ケーションの工夫もしてます」(矢澤部長)。
業務上、率先して在宅勤務を取り入れている矢澤部長。庭でゴルフクラブの素振りをするのが唯一無二の気分転換になっている。
(エフシージー総合研究所 山本ヒロ子 2020.12.11 更新)
【やまもと・ひろこ】
早大卒。40年以上にわたり、企業や自治体、大学の危機管理と広報活動について取材。コンサルティング活動も行ってきた。取材件数は延べ2000社以上にのぼる。経営情報学修士(MBA)
