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味の素
「クノール」タンパク質がしっかり摂れるスープ
2017.10.28
最新記事“コーン畑の番人”が素材から徹底管理
10月も半ばを過ぎ、肌寒さを感じる日も多くなった。今回の「これは優れモノ」は、手軽に体を温められるインスタントスープを取材した。
ブランドはドイツ生まれ
「粉状で、簡単にお湯に溶けるタイプのインスタントスープは実は世界でも珍しい」と話すのは、味の素食品事業本部ニュートリションケアグループ長の山口敬司さん。山口さんは、家庭で本格的な中華料理が楽しめる調味料「Cook Do(クックドゥ)」の開発や海外での食品事業などに携わってきた食品マーケティングのベテラン。「クノール」スープのマーケティングにも深く関わってきた。
「クノール」は、19世紀にドイツで誕生したブランド。味の素は1964年に海外企業との合弁で、日本での製造・販売を開始した。
山口さんによると、海外のインスタントスープは、現在でも小鍋などで若干の調理が必要な「調理タイプ」が主流だという。味の素でも64年当初は、この調理タイプからスタートした。同社が独自技術により、カップに入れてお湯を注ぐだけで飲める「クノール カップスープ」を誕生したのは73年のことだった。以来、製品のリニューアルごとに、溶けやすさやおいしさの進化など品質向上に努めているという。
コーンスープは日本独自
「クノールというと、コーンスープを連想される方も多いのですが、コーンスープは日本オリジナルの製品です」と山口さんは、同社のコーンスープづくりへのこだわりを教えてくれた。
まず、原料となる甘みの強い「スーパースイートコーン」は、北海道と米国のオレゴン州の契約農場で栽培している。同社内で「コーンレンジャー」と呼ばれる“コーン畑の番人”が、気候や温度変化などさまざまな角度から徹底した管理を行っている。
コーンは、甘さが頂点に達した時期に収穫し、鮮度が落ちないうちに粉状に加工。工場の1日当たりの加工処理能力には限度があるが、「加工処理能力を超えない適度な量を収穫できるよう、種まきを1日ずつにずらすようにしている」(山口さん)という徹底ぶりだ。
こうしたこだわりが生んだ「クノール」のスープは、国内で年間8億食が消費されている。山口さんによると、同社独自の「クノール カップスープ」を世界中の「クノール」の開発に携わる関係者に食べてもらったところ、調理タイプよりはるかに美味しいと評判になったそうだ。
日本で50年以上の歴史を持つ「クノール」スープは、高齢者にもなじみのあるブランド。8月末には長年の顧客である高齢者向けに「『クノール』たんぱく質がしっかり摂れるスープ」を発売した。
開発背景について山口さんは「弊社の調べでは高齢者の5人に1人がたんぱく質不足なため、スープで手軽に補えたらよいと考えました」と話す。一般に、たんぱく質は高齢になるるにつれて、からだに取り入れる力が衰えるため、意識して摂取するのが望ましい。
新商品には、従来品と比べて約8倍の量のたんぱく質が含まれているほか、カルシウムの吸収を助けて骨を丈夫にするとされているビタミンDも配合されている。これらの成分は全世代を通じて大切な成分で、
「老若男女誰にでも召し上がっていただきたい自信作です」と山口さんは胸を張った。
高齢者の低栄養対応が開発の出発点
商品開発のいきさつは
高齢者の低栄養への対応が出発点だ。医学・医療の分野では、たんぱく質不足から筋肉がやせ細ったり、骨・関節などに障害が起きることで立つ、座る、歩くといった日常の動作に支障をきたす、高齢者のロコモティブシンドロームを警戒する声が多い。ダイエットやメタボリックシンドロームを気にするあまりに、若いときから必要な栄養素を摂取してこなかったことも一つの要因として挙げられている。
どのタイミングで食べるのが良いか
たんぱく質は、1回の食事で20g摂取することが目安と言われている。本品には1食当たり8gのたんぱく質が含まれている。例えば、朝食時にトーストとゆで卵などと一緒に本品を食べれば、1回の目標摂取量20gはクリアできる。たんぱく質はバランスよくとる必要があるため、昼食などにもおすすめだ。
山口氏は国内外で食品開発に携わってきた
食はその国の習慣や気候などと密接につながっている。同じコメを食べる国であっても、好まれる味はそれぞれに違う。乳原料をベースとする洋風スープは、日本では受け入れられても、乳製品になじみの薄い国ではベースを変える必要がある。「Cook Do」で、本格的な中華料理を日本の家庭で再現しようとした際にも、調理方法から専門家に習い、本場の味を研究しつつ、日本人の舌に合う商品づくりを目指した。
ロングセラー商品はリニューアルが難しい
現在は、約3年ごとにリニューアルを行っている。パッケージや中身について都度、クオリティーの向上に努めている。味を変えるのではなく、良くするという微妙な作業だが、リニューアルの2世代前の商品と味を比べると確実に進化していることが分かる。技術的には高いレベルにあると自負はしているが、世界で一番クオリティーにこだわる日本市場で評価され続けていくことが大事だと考えている。