以前、このコーナーで「黒カビ」や「赤カビ」の正体について解説しました。一般の方には、カビの色のイメージは緑色(アオイロと呼ぶ)という方も多いのではないでしょうか。ブルーチーズの製造に使われるアオカビ(Penicillium)は良く知られていますが、全く性質の異なる緑色のカビが、今回紹介するツチアオカビ(Trichoderma
viride)です。
このカビは黄緑色〜濃緑色で、湿気の多い場所によく生えます。その和名の通り、土壌に多く、自然界では落葉や倒木を分解することに一役かっているようです。ところが、住宅では縁の下の基礎木材をはじめとする建材や畳の裏に発生して「カビくさい」臭いを出します。セルロース分解性が強く、木材や繊維を劣化させたり、腐朽させたりします。このカビは、カビ毒のひとつトリコテセン系化合物(腹痛や下痢などの中毒症状を引き起こす)を産生することが知られています。また、逆に21個のアミノ酸からなるペプチド系の抗生物質
Alamethicinを分泌することも知られています。正に善悪表裏一体のカビといえます。
筆者は、エアーサンプラーを使って、室内の空気中にどのようなカビが浮遊しているかを定期的に調べています。すると、湿気の多い住宅やカビ臭い住宅では、このツチアオカビが良く分離されます。
このカビから住まいや衣類を守るためには、除湿が一番。晴天日の午前10時から午後2時の4時間が勝負。東西南北の窓を開放して風を通し、押入れなども開放して換気しましょう。
エフシージー総合研究所 環境科学研究室 川上裕司
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