温かい季節になり、外を歩いていて目立つのが蚊柱です。俳人の小林一茶は「一つ二つから蚊柱となりにけり」との句を残していますが、蚊柱は夏の季語でもあり、この蚊柱を作っているのが、ユスリカです。一匹の雌を取り巻く形で多数の雄が集まり群飛することで、あたかも黒い柱のように見えるのです。
ユスリカは、ハエや蚊と同じハエ目(双翅目)に属する蚊に良く似た昆虫ですが、蚊のような針状の口器を持たず、人を刺すことはありません。体長は0.5ミリ〜10ミリと小型で、雄の触角は全方位に生えたブラシ状をしています。
世界中で約6000種、日本には約300種が記録されています。寒冷な湖沼、水温が50℃にもなる温泉、pH2の酸性河川など様々な条件の水域に幼虫が生息しています。都市河川や公園の池にも生息することから、道端などでも見かけることが多いのです。水に棲む幼虫が、底に沈む有機物を食べて成長することから川や池などの浄化に役立つ反面、川の富栄養化が進んで、大量発生すると川のそばを歩くのも困難になります。単に不快というだけではなく、ユスリカを抗原としたアレルギー性鼻炎や呼吸器疾患(ユスリカ喘息)」が知られています。
夜間灯火に飛来したユスリカが、窓の桟で死亡堆積し、乾燥して風化する過程で微細塵となります。これが窓を開けて換気する際に室内に侵入浮遊し、人が吸入することで発症します。実際に、ユスリカが大量発生する場所の住民に、症状が多く出ることがわかっています。
エフシージー総合研究所 環境科学研究室 川上裕司
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