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商品検査あれこれ
第3回:たばこのニオイが
空気清浄機でとれにくいのはなぜ!?

1.たばこのニオイは粒子成分とガス成分からなる約5,000種類の化学物質
2.空気中のニオイ成分のすべてを脱臭フィルターで取り除くことはできない
3.繊維等の奥に染み込んだ微粒子のニオイ成分は空気清浄機でとれにくい


【たばこのニオイについて】

 生活科学研究室は暮らしに関わる商品を対象に商品検査を行っています。通年を通して試験依頼をいただいているのは「空気清浄機」です。前回のコラムでは空気清浄機の脱臭性能をとりあげ、ニオイの成分について紹介しました。昨今、家庭内だけでなく様々な生活環境でニオイ対策の関心度がとても高くなっています。特に、「たばこのニオイがとれない」という経験をされた方も多いと思います。
 今回は空気清浄機を使用しても取れにくい「たばこのニオイ」に注目し、空気清浄機の脱臭性能の観点から「取れないニオイ」の謎に迫りたいと思います。


【たばこの煙の成分】

 喫煙によって発生する煙の成分は約5,000種の化学物質です。化学物質は「粒子成分」と「ガス成分」に大別されます。ニオイ成分はいずれの成分も含みます。これらの化学物質は約0.01~1mの粒子径で非常に小さな粒子(微小粒子)です。これらの化学物質には「発がん性がある」と報告される物質も約70種類存在しています*1

 一般的に、空気清浄機の脱臭フィルターは無数の穴を有す活性炭が使用され、ニオイ物質をフィルターに物理吸着させて除去する仕組みです。一方、脱臭能力は化学物質の濃度、活性炭の量にも影響されるため、使用機器の脱臭性能や生活環境によってはニオイの低下を期待できない場合があります。たばこの煙は微小粒子物質であるため、壁、床、家具、衣服に付着するだけでなく繊維の奥に染み込みやすく、留まります。ファン式空気清浄機の場合、空気を内蔵フィルターに通すことで浄化する仕組みになっており、言い換えれば、空気中に含まれない汚れ物質の除去は難しくなります。

図:たばこの煙は微小粒子物質であるため、壁、床、家具、衣服に付着するだけでなく繊維の奥に染み込みやすく、そのまま留まります

 一般社団法人日本電機工業会で定める脱臭評価やメーカーの独自試験のニオイ成分は空気中に残存し、かつ、主要な成分に限られていることにも注意が必要です。空気清浄機の取扱説明書やパンフレットに「すべてのニオイを除去することはできません」、「ニオイの強さ、対象物の素材によって性能は変わります」等と注釈があるのは、このような理由があるからです。
 空気清浄機の購入の際は、商品パンフレット等に記載されている性能試験の結果を確認することが大切です。

図:ファン式の空気清浄機は、空気を内蔵フィルターに通すことで浄化をする仕組みです。言い換えれば、空気中に含まれない汚れ物質の除去は難しくなります。

【衣類や家具などのたばこのニオイ対策】

 たばこの煙が衣類等に吸着した場合は、その残留物質が大気中の化学物質と反応し有害物質を生成することが報告されており、ニオイだけでなく健康のためにも対策が必須です。
 たばこのニオイ成分は水に溶けやすいものが多いので、ニオイの付いた衣類はすぐに洗濯する、家具、壁などのこまめに水拭き、カーペットやカーテン等の定期的に洗濯する等がお薦めです。また、脱臭機は脱臭機能に特化していますので、生活のシーンに合わせて選択されると良いと思います。

 次回は空気清浄機の主機能である集じん機能について取り上げます。お楽しみに。

*1;厚生労働省「喫煙の健康影響に関する報告書」では、米国公衆衛生総監報告書の評価方法に準じて、各疾患と喫煙との関連に関する国内外の科学的証拠を「結果の一致性」等の観点で評価し、それらを統合して喫煙との因果関係を 4 段階で判定している。例えば【喫煙と肺がん】、および、【受動喫煙と肺がん】の因果関係はレベル1(科学的証拠は、因果関係を推定するのに十分である)と判定している。一方、鼻腔・副鼻腔がんの場合、喫煙との因果関係はレベル1であるが、受動喫煙はレベル 2(科学的証拠は因果関係を示唆しているが十分ではない)、と判定されている。

[参考文献]
一般社団法人 日本電機工業会
厚生労働省 「喫煙と健康」、「受動喫煙対策」

(2020年6月4日)

生活科学研究室